曖昧な交響曲

執筆、叶雨がお届けする狂った音たち 

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外に出ることはできない

現実を受け止め始めた秋

これまで泣き叫んだり反抗したりしたけど意味なんてなかった

だから仕方なく大人の言うことに従うことにした

ただただ音を奏でる日々

毎日がモノクロでツマラナカッタヨ

「×××さん、今日は新しい子がくるわ」

いつもどおりに音を出し終え、廊下を歩いてる時のことだ

『オーケストラ』二号機のアレグレッタ=テノール

いつも笑顔で気持ち悪い

俺は自然に変な顔になった

「あらあら×××さん、ご機嫌斜め?それとも単純に私が嫌いなの?」

笑顔

「別にそんなのじゃない」

笑顔

「ならいいのだけど。時間は守ってちょうだいね」

笑顔

「はぁ、分かってるけど。そんなことぐらい・・・」

「なら良かった」

ニコッと笑顔を見せる彼女は世間から言わせれば天使とか女神とからしい

俺には見下しているようにしか見えないけど

「それじゃあまたあとで」

ドレスの裾を両手で丁寧に持ち頭を下げる

女性の礼儀というものだろうか

ああいうところはしっかりしている

「アレグレッタ」

俺に背を向けて歩き出す女性を呼び止める

止められたことに驚いたようなアレグレッタは振り返ったときに

少し動揺していた

「俺のこと二度とその名前で呼ぶなよ」

これだけ言うと俺はすぐそばにあった用のない部屋へ入った

だから俺は見てないんだ

アレグレッタがいつもの笑顔とは違う何かを俺に向けていたことに

出会い-一号機の受難-

俺は所詮この世界の言いなりでしかない

狭くて暗い部屋に閉じ込められる

部屋の中にはたくさんのゲームに玩具

暇をすることなんかないし、お願いすればなんでも叶えてくれる

ただ一つを除いては。

「お兄さんお兄さん、外に連れて行って欲しいんだ」

「ダメだよ。いつも言っているじゃないか」

「嫌だ!だって外はたくさんの楽しいことがあるって誰かが言ってた!」

外に出たいという欲望を吐けばいつもお兄さんは言うんだ

「それは嘘なんだ」

「外は怖いことばかりなんだよ。だって知ってる人がいないんだ。

君は一人になってしまう。それは嫌だろう、×××?」

うん、分かった。やっぱりお外はコワインダネ

 

コトバの姫君

支えてくれたのはあなた

遠い遠い国の王子様

あなたの存在が私をいつも輝かせてくれた

だから頑張れるの

お城の中では楽しいこと、嬉しいことばかりではないわ

悲しいこと、辛いこと乗り越えなければならない壁がいくつも存在する

堅くて厚い壁だけれど私は壊すことができる

いつか白馬に乗って現れた王子様に言うの

「愛してる」

今はまだ言葉にできないけれど

僕の負けか

だーーーーっ!!!

毎回毎回何なんだよ!これはぁ・・・

付き合ってられっかよぉお・・・

『廊下は走っちゃダメだよ』

壁に飾られた言葉を俺は全力で無視

仕方がない

だって追いかけられてるから

「信乃くーーん!あっそびっましょーーーー」

嫌だぁああああああああぁぁぁぁああああ!!!!!!

やばい、そろそろ体力尽きる

「素直じゃないんだからぁ、幸が遊んであげますよー」

何で俺が遊んで欲しいみたいになってるの?!

あいつ頭おかしいって!!

とりあえず逃げる

「あの角を曲がれれば俺は勝つ・・・」

それまで全力で走る

もうボルトは超えた、と思う

・・・そしてこの角を曲がる・・・!

「・・・・・・」

「今日雨だからそこの非常ドアあかないよ」

振り向いたら笑顔の君がいた

「     」

レンズの先に見えたものは

『人間は皆平等』なんて言うけどそんなものただの上辺だけの言葉じゃない?

きっとどこかで違うんだよ

だって『平等』なんて無責任な言葉吐き気がするんだもん

その言葉が真実ならば私はこんなことになってない

「いつになったら『真実』が見つけられるの?」

「今見ているすべてが真実なんだよ」

嘘つき

この人が言うことはほとんど嘘だもの

だっておかしいから

いつもへらへら笑ってばかりいる

私と同じなのに

『現実』を受け入れているんだ

嘘の世界を

だけどそれは『嘘』だから

私はまた探すの

「いつになったら受け入れるんだろうね」

いつになっても受け入れないわ

おいでおいで少女さん

並びゆく本の羅列

もう何を考えればいいかわかんないな

どうしようかな

また巡る廻る

光りゆく一冊見つけましょう

そこに本当の真実が書いてあるから

見つけれないなら探しましょう

なくしてしまったのなら作りましょう

広くて狭い本の中に

君は何を願うだろうか