曖昧な交響曲

執筆、叶雨がお届けする狂った音たち 

2

外に出ることはできない

現実を受け止め始めた秋

これまで泣き叫んだり反抗したりしたけど意味なんてなかった

だから仕方なく大人の言うことに従うことにした

ただただ音を奏でる日々

毎日がモノクロでツマラナカッタヨ

「×××さん、今日は新しい子がくるわ」

いつもどおりに音を出し終え、廊下を歩いてる時のことだ

『オーケストラ』二号機のアレグレッタ=テノール

いつも笑顔で気持ち悪い

俺は自然に変な顔になった

「あらあら×××さん、ご機嫌斜め?それとも単純に私が嫌いなの?」

笑顔

「別にそんなのじゃない」

笑顔

「ならいいのだけど。時間は守ってちょうだいね」

笑顔

「はぁ、分かってるけど。そんなことぐらい・・・」

「なら良かった」

ニコッと笑顔を見せる彼女は世間から言わせれば天使とか女神とからしい

俺には見下しているようにしか見えないけど

「それじゃあまたあとで」

ドレスの裾を両手で丁寧に持ち頭を下げる

女性の礼儀というものだろうか

ああいうところはしっかりしている

「アレグレッタ」

俺に背を向けて歩き出す女性を呼び止める

止められたことに驚いたようなアレグレッタは振り返ったときに

少し動揺していた

「俺のこと二度とその名前で呼ぶなよ」

これだけ言うと俺はすぐそばにあった用のない部屋へ入った

だから俺は見てないんだ

アレグレッタがいつもの笑顔とは違う何かを俺に向けていたことに